田辺寄席の如月席は塩鯛さんのたっぷりの会だった 開演前の文太師匠の開口ゼロ番はいつも楽しみにしている 今日は菅原道真の『類聚国史』の「る」についての話だった 「る」で始まる噺はないとのことでよく似ている「群書類従」の話を始めた よく聞くと「塙保己一」のことだった 塙が編纂・刊行した本(版木)のことである
「はなわほきいち」の名前は久しぶりに聞いた 文太師匠は今は目が見えない 塙保己一も目が見えない 現在の埼玉県本庄市の出身 江戸時代の人物である 7歳の時に失明 その後江戸に出て一生懸命学ぶ 太平記を全部暗記してしまうほど記憶力が良かったという
逸話が披露された ある人が「さんずいへんに吉(よし)」と書いた字のお店はどこにあるのかと聞いて来た そんな字はない するとそれを聞いていた塙保己一はその「さんずいへんによし」は「油ではないか」と答えたという 吉と由の違い さすが鋭い 塙保己一はヘレンケラーが師と仰ぐ人物であることも知った「群書類従」は現在「温故学会」が保存しているという 渋谷の國學院大學の近くにある 一度行ってみたいと思う
さて塩鯛師 桂都丸から四代目塩鯛に襲名したのが平成22年 ざこば師匠の一番弟子である 今日は塩鯛門下の二番弟子の鯛蔵が「近日息子」を最初に演じた 早口で余裕がなかったように思えた 続いて塩鯛師は「貧乏神」小佐田定雄作 なんかくどいように感じて私には合わなかった 文太師匠は「禁酒関所」何回も聞く噺である 江戸では「禁酒番屋」上方では松本氏 江戸では近藤氏と武士の名前は異なるが「正直者」のサゲは同じ 文太師匠は本当に面白く演じる
最後は再び塩鯛師 「質屋蔵」天神さんが出てくる噺で今の季節にピタリ サゲは道真公の「東風吹かば 匂いおこせよ 梅の花 主なしとて 春な忘れそ」・・・どうやらまた流されそうな・・・塩鯛師の熱演に思わず拍手