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2011年9月29日木曜日

目黒のさんま

それは、房州だからまずい。さんまは目黒に限る。これは誰もが知っているフレーズであると思う。幼少の頃、さんまが出るたびに思い出した。何回聞いても面白い。これが古典というものだろう。松喬師匠が述べていた。大抵創作は1回聴いたら二回目は面白くないが、古典は何回聴いても面白い。あたっている。三代目金馬師匠のさんまは、歯切れが良くて最高。
さて、ストーリーは、殿様が鷹狩りにめぐろに出掛ける。お昼時に一軒の農家からさんまを焼くいい匂いがする。食べたいと殿様は言うが、家来はあの脂ぎった魚を下賤の物といい、食べささない。しかし殿様は食べたいと言う。食べたら美味しかった。お城に帰った殿様は、さんまの味が忘れられず、また食べたいと駄々をこねる。御膳奉行は房州産のさんまを料理するのだが。脂身、骨をとってさんまとは思いつかないようなものにしてしまう。食べた殿様は、思わずまずいと声を発する。これはどこのさんまか?と家来に聞く。房州産ですと答えるのだが。
根室の友人がいる。彼からさんまを贈ってもらった。これがなんと立派なさんま。今まで見たことのない太い大きなものだった。思わず、「さんまは根室に限る」と言ってしまったのである。

2011年9月21日水曜日

算段の平兵衛

田辺寄席長月席第582回は、林家竹丸の段であった。竹丸さんが二席をたっぷり。最初は三枝作の「立候補」。小学校6年生の息子が生徒会会長に立候補する噺。創作落語だから初めて聴くと面白い。もう一席は、トリで「算段の平兵衛」。長い噺だ。平兵衛は、悪知恵の働く輩。不都合な出来事が起こると皆が平兵衛に解決を依頼する。平兵衛はなんとか解決してしまう。落語だから笑って済ませることが出来るが、現代では駄目。誰かさんみたいになる。算段とは、いろいろやりくりして物事を解決するということらしいが、この噺は悪事をなんとかごまかすようで後味は良くないが、サゲでは、平兵衛が騙されるということでおさめている。
竹丸さんは、自分のことを子泣き爺と紹介したが、そういえば良く似ている。もとNHK記者のようである。神戸大学を卒業、記者から噺家に転身。吉弥さんも神戸大。京都大学は、たま、福丸。大阪大学は染左さん。皆さんは笑っているけど、親は泣いているそうだ。竹丸さんも入門するとき、染丸師匠の前で両親は泣いてばかりいたという話をしていたなあ。

2011年9月11日日曜日

壺算

二荷入りの水がめを買いに行く噺。水がめと言っても今はあまりピンと来ないので、マクラで昔の生活の解説を入れる。今で言うならポリバケツというところか。まず一荷のカメを買う。二円五〇銭を五〇銭値切る。つまり二円。これを購入するのだが、これを予定通り返却して二荷のカメと交換してもらう。一荷で二円なら二荷なら四円。店の主人からお客さん買いもの上手と褒められる。次は支払い方法だ。まず一荷のカメを二円で引き取ってもらうから二円。さきほど二円払ったからこれで四円となる。これでめでたく二荷の水がめを二円で購入することができた。主人は一旦納得するのだが・・・。
どうもおかしい。何度もお客を呼びとめ、確認するのだが、・・・。頭が混乱して遂に二円も返しますというサゲになる。
この噺を立川談笑が、薄型テレビにして創作落語にしているという。まだ聴いたことはない。おそらく二〇インチを買って四〇インチに買い換えると言う噺ではないか。ぜひ聴いてみたい。頭の体操である。返品ということは日常でも良くある。そのときに他のものを買い換えることがある。思い違い、勘違いをテーマにした実に良くできている噺である。ああおそろしや。思う壺というのはここから出たのかな。

2011年9月8日木曜日

高津の富

高津の富、江戸では宿屋の富。この噺は何と言っても笑福亭松鶴師匠が一番であると思う。あの「子の1365番」が、あの「子の・・」と粘る言い回しが面白い。一度、ロト6かミニロトで1365を組み合わせた数字を買ってみたい。あたるかもしれない。噺は、因州・鳥取から来た男が宿屋に泊るところから始まる。男は口から出まかせを言う。泥棒に入られたが、千両箱をたった80しか持ち出さなかったとか、・・言いたい放題ほらを吹く。宿屋の主人も信じてしまう。男は主人から残り1枚の富札を買って欲しいと頼まれ、なけなしの1分を出してしまう。
さて、高津神社では富くじの抽選が始まっている。本番前に実に楽しい男が出てくるが、最終的には子の1365番が当たる。千両箱である。男は、震えながら宿に帰り、下駄を履いたまま布団にくるまってしまう。宿屋の主人も番号を見てビックリ。宿に帰って、下駄ばきで2階に上がる。男は誰にも会わん、誰じゃ、下駄で上がってくるのは・・・主人か。主人が布団を剥がすと男も下駄をはいていたというのがサゲ。
松鶴師匠の家はすぐ近くにあった。住吉の長屋である。家の中を見せてもらったこともある。庶民の町で、ゆったりと楽しんでいた師匠。愛すべき噺家である。また、高津神社には文枝師匠の碑がある。松鶴師匠のお墓はどこにあるのかな。

2011年9月7日水曜日

小豆島のジャスミン


小豆島に行って来た。小豆島と言えばオリーブ。そのオリーブ園にジャスミンの白いが咲いていた。鼻を近づけると甘い香りが・・・。恋人の散歩道とか。ミモザもある。もちろん、オリーブも。ポパイが出て来るかも。久しぶりの小豆島。島に住んでいた心友が昨年亡くなった。尾崎放哉が眠る墓地に彼も眠っていた。合掌。

2011年9月1日木曜日

転失気

前座噺である。知ったかぶりの噺は沢山ある。「ちりとてちん」も有名。その他、手水回しも勘定板も同じようなストーリである。転失気のサゲは上方と江戸では違うようだが、上方の方が分かりやすくて面白い。上方のサゲは、「医者は転失気のことをおならと呼んでいますが、お寺では、盃のことをいつから転失気と呼んでいますか?もうそれは奈良・平安の時代から・・・」江戸では、盃?どういうわけで・・「これを沢山重ねますとぶうぶうが出ます」となっている。「ぶうぶう」は、酔っ払いへの小言らしいのですが、それと放屁をかけたとか。少し分かりにくいですね。
和尚さんが医者をよぶと、医者は「転失気」があるかと聴く。和尚さんはありませんと答える。医者が帰ったあと、和尚さんは、転失気がなんのことか分からない。珍念さんは、いろいろ聴きまわるが、分からない。そのうち、薬を取りに行った珍念さんは、医者から「放屁」ということを聴く。珍念さんは、和尚さんに「転失気は盃のことです」と嘘をつく。盃=呑酒器と和尚さんは連想して医者に「転失気」を説明するのだが。やはりサゲは上方、奈良・平安がいい。今度転失気のことをお医者様に聞いてみようと思う。