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2011年6月29日水曜日

試し酒

この噺は、確か江戸で聴いた。,誰だったか忘れた。どきどきする展開。久造さんは、やはり東北弁の方が良いような気がする。上方は井上さんとなる。尾張屋さんと近江屋さんが、5升飲めるか、飲めないかで賭けをする。近江屋さんの下男の久造さんが5升飲めるという。そんなことないやろうと温泉の豪遊を賭ける。久造さん、驚いて責任を感じて外に行くと言って出てしまう。しばらくして帰って来た。飲み始める。1升、2升・・・そして5升を飲み干す。5升は誰も飲めないというのが、先入観にある。落語らしい。驚いた尾張屋さんが負ける。尾張屋さんが久造さんに質問。外に出かけたのはおまじないでも・・・久造さん、「飲んだことがないので、前の酒屋さんで試しに5升飲んできた」意外なサゲで大笑い。面白い噺だ。
この作品は、今村信雄作らしい。真相は藪の中だそうだ。落語研究家の正岡容氏と並ぶ巨頭だ。正岡さんは、米朝さんと親交があった。5代目小さん名人の十八番だったらしい。噺は大きい方が面白い。このような作品を書きたいのだが。センスがないのが寂しい。

2011年6月26日日曜日

指南書

珍しい噺である。森乃福郎師匠で繁盛亭で聴いた。氏は珍品を探して高座にかけるのが趣味のようである。京都の清吉が主人公、男の悋気でストーリーが続く。縁があり、お花を嫁に取るが治らない。そのうちに父が亡くなる。父も心配していた。葬儀で住職さんから迷った時にと「指南書」を受け取る。ある日、草津の叔父さんに50両を届けることになった。大津に着くと、草津行の矢橋船が出るという。道中で知り合った御仁から誘われて迷った。指南書をみると「急がば回れ」とある。清吉さんは歩いて草津に。ところが大雨と強風で船が沈没。全員亡くなった。叔父さんもビックリ。
草津名物「姥が餅」を持たせて、京都に戻るとお花が二つの床を敷いて寝ている。ここで悋気が。
我慢して自分も寝ることに。あくる朝、姥が餅を食べようと二人に勧めたのだが。変な臭いが。指南書を開けると「うまいものは宵の内に食え」と書いてあった。これがサゲ。落語には、秘伝書というのもあるが、ちょっと違う。
急がば回れは、これが語源らしい。福郎師匠は博学。読書家である。彦八まつりでも「古本屋」を出している。「姥が餅」は草津南洋軒の名物、蕎麦も旨い。お店に入ると「蕎麦は蕎麦でもあなたの傍がいい」とのポスターがある。こういうお店は大好きである。

2011年6月24日金曜日

ねずみ

6月の田辺寄席。桂かい枝さんの「じっくりたっぷり」を堪能した。短パン刑事とねずみが演目だった。新作の短パン刑事、初めて聞いた。あまり覚えていない。笑うには笑ったが。帰りに地下鉄の駅で「ゴメンで済んだら警察いらん」という大阪府警のポスターがあった。「タレこみ歓迎」も本当にあった話。府警はなかなかやるわい。昔はそのフレーズ良く使っていたような気がする。
ねずみは、この前、聞いた福團治師匠と同じ舞台の岡山だった。岡山の旅籠。なんとなく江戸の噺の仙台の旅籠が良いような気がする。日光にも近いし。伊達藩だし。しかしわが故郷讃岐高松には左甚五郎の美術館があるから岡山もありかな。とらやとねずみやの遺恨騒動。ネズミはトラの彫り物を猫と思い込みじっと動かなかったがサゲ。三井の大黒、竹の水仙といい甚五郎が出てくる落語も聴かせる。知恩院の忘れ傘、東照宮の眠り猫など、伝説の人物である。

2011年6月23日木曜日

袈裟茶屋

18日(土)久しぶりに田辺寄席に行った。正月以来だ。大久保さんが体調を崩され、お元気になったとのことで、その後の様子も気になっていた。受付でいつもの大久保さんに会った。良かった。
この日は、桂かい枝さんの「じっくりたっぷりの会」だった。桂文太師匠は仲入り後に登場。袈裟茶屋との演目であった。聞いたことのない噺だった。しかし、それは、文太師匠得意の「贋作」であった。錦の袈裟の贋作。袈裟をふんどしに・・・与太郎ひとりだけもててもてて・・・
大阪は新町。東京は吉原が舞台である。隣町の若い連中に対抗して与太郎達が錦でそろいの褌をこしらえ、新町で遊ぶ。与太郎はお寺の和尚さんから明日の朝必ず返すと言って錦の袈裟を借りてくる。錦で褌をこしらえたら、それがもてるわ、もてるは。女が離そうとしない、「今朝は帰しません」。与太郎慌てて「袈裟は帰さないと困る」がサゲ。文太師匠最高。故郷に錦を飾るの錦?今度お坊さんに会うことがあったら良く見てみよう。京都は錦市場ですね。

2011年6月17日金曜日

鹿政談

米朝師匠から初めて聞いた噺。だいぶと昔のことだったように思う。奈良では町の早起きが名物とか。何しろ奈良の鹿は神さんである。その神さんが家の前で死んでいたえらいことになる。わざわざよその家まで鹿を持って行く。確かに奈良は鹿が街中に堂々と歩いている。学生時代に興福寺の境内で寝袋に入って野宿をしたことがあった。朝、ザワザワとしたあたりの様子で目が覚めた。鹿に囲まれていたのだ。怖かった。
奈良三条の豆腐屋与兵衛さん、正直者として知られていた。豆腐屋は朝が早い。暗いうちに「きらず」(おから)を桶に入れて表に出していた。大きな音がして犬がおからを食べている。割り木を投げつけると犬に当たり死んだ。これが犬ではなく鹿。鹿を殺せば死罪。代官に捕えられ、奉行所での取り調べ。お奉行さんは、豆腐屋に同情的。むしろ代官の悪行を責める。お奉行さん「その方、商売は豆腐屋であったな」「はい」「きらずにやるぞ」「まめで帰ります」がサゲ。2段サゲ?。おからは卯の花ということもあるが、関西では豆腐のように切らなくても良いから、きらずと言うことをこの噺で知った。米朝師匠はさすが人間国宝。86歳。

2011年6月14日火曜日

お血脈

平成20年2月1日池袋演芸場に13時に入場して、20時30分に退場した。93席は満席だった。豪華な顔ぶれ。権太楼・三三・扇辰・市馬・左龍・菊之丞・喬太郎・彦いち・正雀・馬桜・圓太郎・圓丈などなど。昼の部の主任は喬太郎、夜は圓丈。いずれも満足する噺だった。
お血脈(けちみゃく)は、長野の善光寺が出てくる。本多善光(ヨシミツ)が池のほとりを歩いていると「ヨシミチ、ヨシミチ」と呼ぶ声がする。みると捨てられた阿弥陀如来の像が「余は信州へ参りこちたい」というのでこの像を信州まで運んだ。これが善光寺の縁起とか。ほんまらしい。善光寺でこのお血脈の御印を額に頂くと誰もが極楽に行けるということで大変な賑わいになった。おかげで地獄はさびれてきた。そこで対策を打った。石川五右衛門が登場、首尾よく御印を盗んだものの、それを額に押したものだから、五右衛門さんも極楽に行ったというのがサゲ。お血脈というのはどんなものだろう。免罪符のようなものと解説しているものもあるが、ご朱印のようなものだろうか。演じた扇辰師匠も渋い噺家である。

2011年6月9日木曜日

結婚式風景

柳昇師匠の十八番である。大きなことを言うようですが、いまや春風亭柳昇というのは我が国では私ひとりでありまして・・・で始まる。ここでどっと笑いを誘う。実にうまい。初めて聴いたのは、昭和63年、浅草演芸ホールだった。前から2列目。ここで聴いて、すしや通りに行ったのを覚えている。
結婚式の祝辞が長い。長いことを具体例を出して皮肉る。それが面白い。仲人の挨拶は全部同じ。新郎の成績は優秀、新婦は美人。そんな馬鹿な話があるかと逆なことを言う。これが良くできている。実際に結婚式の実況中継を行う。媒酌人挨拶がこれが滅茶苦茶。新郎は勉強が好きで、小学校6年のところを8年とか喋る。新郎の上司は、新郎の悪いことばかり言う。新婦の恩師も同じ調子。実に楽しい噺になっている。柳昇師匠しかできない落語だと思う。爆笑の連続である。

2011年6月8日水曜日

はてなの茶碗

茶碗シリーズ。米朝師匠の手の使い方がバッグンである。目の使い方も。桂三風さんに2009年の彦八まつりで教えてもらった。あれは時うどんの鉢の持ち方だったが。仕草というか所作というか、オーバー目にやるのがコツだそうだ。仕草も落語の楽しみである。想像の世界に導いてくれるのは多少オーバーな方が分かりやすい。
清水の音羽の滝の前にある茶店。茶金さんが、お茶の入った器を不思議そうに眺めている。下から横から、そこで発した言葉が「はてな」。隣で観ていた油屋の行商人がこれは高価なものと思って購入。早速、茶金さんの店に持ち込む。しかしそれはただの価値のない器。どこかが漏れていただけの話。怒った行商人がケツをまくる。さすがは茶金さんお殿様にその話をする。大金が入る。油屋も大儲け。今度はみずがめの漏るのを持ってくる。「火焔太鼓」と同じようなサゲで終わる。

2011年6月5日日曜日

井戸の茶碗

最初に聴いたのは確か東京の寄席だったような気がする。自分の名前が出てきたのには驚いた。それ以来好きになった。高木作左衛門、作久左衛門とか作久左右衛門とか書いているものもある。本当はどれだろう。江戸時代のお侍さんである。細川家の家来。貧乏侍である。この侍と浪人千代田卜斎氏と正直もののクズ屋の清兵衛さんが繰り広げる人情話。
清兵衛さんが卜斎さんから仏様を預かる。それを清兵衛さんから買った高木氏、磨いているうちに50両が出てくる。お金を返すが、卜斎さんは断固断る。お金を受け取る代わりに茶碗を高木氏につけて出す。これがまた井戸の茶碗と言って名器。細川さんが300両で引き取る。卜斎さんに返そうとする。卜斎さんは娘のお絹を高木が嫁にするなら支度金として受け取るという。「磨くといい女になりますよ」と言われて、高木氏「磨くのはよそう、またお金が出ると困るから」がサゲ。

2011年6月3日金曜日

宗論

宗教のお噺。この噺は確か3年前が最初だった。そのときはアイ・ポッドのポッドキャストから入手したもので、演者は二つ目だったと思う。今回、改めて小三治師匠の宗論を聴いた。若き日の小三治さん。この頃から人気絶頂だった。今は落語協会の会長だ。もう一人の噺も聴いた。五明楼玉の輔さんは、落語百選DVDで鑑賞した。因みに、玉の輔さんは、噺家の手ぬぐい集めが趣味だ。
浄土真宗の父と耶蘇教のせがれの宗旨争い。「お父様・・」と声を裏返しにするのが、面白い。笑いを誘う。讃美歌312番を入れるは玉の輔さん。「いつくしみ深き友なるイエスは・・・」と結婚式を思い出す。「宗論はどちらが負けても釈迦の恥」とか言って喧嘩の親子の仲裁に仙台出身の奉公人権助がに入る。親爺さん喜んで、「いいこと言うなあ、権助、お前も真宗か」いや「奥州でございます」というサゲで終わる。納得。

2011年6月1日水曜日

莨の火

田辺寄席で初めて聞いた噺。林家うさぎさんだった。たばこの火と読む。難しい字です。泉州の飯(めし)の旦那。大金持ちである。今でも子孫がいるようだ。名前は飯とは言わないようだが、聞いたことがある。北新地でのお茶屋遊びでお金を皆にばらまく。気持ちがいい。そのお金はお店に立て替えてもらったもの。お店は警戒して途中で止める。旦那はお店の度量を確かめていたのだ。
大金持ちと知ったお店は挽回策にと慌てて旦那の機嫌を取る。それが凄い。しかし旦那は動じない。お店は何かお役に立つことがあればと問いかけると、「莨の火を貸して」。これがサゲとなる。どっと爆笑。とてもスケールの大きな話で楽しい。これは難しいので若い人が演じるには荷が重たい。